2019年01月24日

横浜事件弁護団 書面提出期限徒過の謎

横浜事件(第二次世界大戦中に、記者らが弾圧され、有罪とされて投獄されるなどした事件)について、弁護団が、東京高裁の判決を不服として上告したものの、期限内に上告理由書を裁判所に提出しなかったために、上告が却下されてしまった。という、報道がありました。

これ、個人的には、ちょっと首をかしげる事件です。

まず第一に、上告理由書の提出期限徒過、というのは、弁護士にとってはめちゃめちゃ重罪です。それだけで、お客さんが、上告審に訴える権利を奪われてしまうからです。
横浜事件については、報道もされますし、日弁連も声明を出すなど、社会的に耳目を集める事件でした。その事件の上告理由書の提出期限を、忘れるでしょうか?

私は、上告し、上告提起通知書が来ると、すぐに、50日、つまり上告理由書の提出期限を確認し、「上告理由書提出期限三日前」「一週間前」「二週間前」くらいの勢いで、手帳に書き込みます。これは私だけではなく多くの弁護士がやるでしょう。それくらい、期限を気にします。めちゃめちゃ重要なんです。

第二に、まあ、人間ですから忘れるかもしれません。でも、これは弁護団事件です。弁護士が何人もかかわっている…はずです(弁護団が何人の弁護士で構成されているかまでは、存じませんが)。そのうちの誰もが、「アレ、そろそろっすよね、期限。どうします?」と言わなかったのか。誰か一人くらい気が付くでしょうや。普通。と思うのです。

第三に、まあ、上告理由書を起案しなくてはならないということや、その期限がいつかということはお客さんも知っているはずで(それを説明していなかったらそれこそ大問題)、お客さんの方から、「先生、理由書、書いてくれましたか?大丈夫ですか?」というリマインドもなかったのか…。

お客さんと、弁護団側の意思疎通がよくなかったのか。弁護団内部で、気軽に声を掛け合って期限をリマインドしあうこともできないくらいの、「何か」があったのか。それとも、みんな「誰かがやるだろう」と思っていて声に出さない無責任体質に、弁護団が染まっていたのか。

まあ、ひとさまの事件ですし、ひとさまの事件処理ですから、軽々に批判すべきではない。気を付けなければ、明日は我が身です。弁護士は、上告期限や、上告理由書の提出期限などはもちろん、裁判所に、「いつまでに書面を出しなさい」と指示を受ければ、当然それは守らなくてはいけません。裁判所との約束を破ることは、弁護士の、最低限の礼儀ですし義務。ぎゃくに、裁判所との約束を平気で破る弁護士には、要注意です。そういう方は、上告期限のような、クリティカルなところで、ミスをする可能性が高いといえます。気をつけましょう。


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