2022年03月15日

「男にだけは、気を付けろ」とじいさんは言った。

私が大学を卒業し、司法試験に合格して、一度、函館の祖父の家に帰った時のことです。
祖父はよほどうれしかったのでしょう、私が祖父の家に入った時、ソファの上で横になっていたのですが、むっくりと起き上がり、よろよろと歩いてきて、わたしの手を取り、

「おめ、えぐやったな」(お前、よくやったな)と言いました。

その日の夜、祖父は、戸棚からとっておきのブランデーを取り出し、それをちびちびと飲みながら、私に向かって、こう言いました。
「いいか、おめ、おめは、大学も出た。資格も取った。あとは、男だ。男にだけは気を付けろ。」


私にシミジミそう言い聞かせて、それから本当にすぐに祖父は倒れ、あっという間に還らぬひととなってしまいました。

で、この会話を祖父としたときには、私はまだ、祖父が何を言っているか、いまいち理解していませんでした。まだ、20代前半。何も知らなかったころのことです。

今になって、本当に、祖父のこの一言は、至言だったと思います。

この頃、卒業式でしょうか、華やかな羽織姿の若い女性をよくみかけます。また、私の所属する山岳会にも、どんどん若い女性が見学に来ます。

これからいろんなところで羽ばたこうとする若い女性たちを見ると、本当に、心の底から思います。

おとこにだけは、気を付けろ。と。