その弁護士は、仕事が早いか、遅いか。

nojimarie

2023年02月17日 12:44

我々弁護士は書面を書くのが仕事です。時々、しゃべるのが仕事だと思っておられる方がいますが、まあ、しゃべるのもしゃべりますが、書くのが8割です。裁判官もそうですね。

なので、書くのが遅い、または書けない、というのは、我々法律家にとって、致命的です。仕事できないってことですからね。
ところが、ほんとに、「書けない」って方が、たまにいます。そういう方はすごく苦しんでいるのですが、まあ、お客さんとしては、選んではいけない弁護士を選んでしまった。ということになります。

私は自分のしたにいた若手弁護士に、何人かそういうのがいたことがあります。

書面の前で、固まっちゃうんです。なぜ、書けないのだろう、というのを、不思議に思って観察しました。

まず、まあ、弁護士なので頭が悪いわけではないです。が、タイプ1として、頭の中が整理できていない、というひとはいますね。頭の中が整理できていないというか、何を整理していいかわからない。これは、まあ、新人にはいます。経験を積めば改善がみこめるので、このタイプ1は、あまり心配いりません。お客さんには迷惑ですが、しかし、研修医だって、手術してうまくなっていくわけです。ま、誰もが実験台にはなりたくないでしょうが、しかし誰かになってもらわなければならないわけです。

タイプ2。もう新人ではないのに書けないひと、それは、自分に、根本的な、自信がない人です。
どんな弁護士でも、どの方針で書面を書くか、というのは、いろいろ考えて決めるわけです。
こう書けばああ反論されるか?こう書きたいけど、それには証拠が足りないけどどうしよう?こういう主張にしたいけど、これって、法律的に間違ってないよね?などなど、悩みます。

それで、いろいろ比較検討して、決めるわけですけれども、書けない人というのの多くは、比較検討した結果、これがベストだ、これを選ぼう、と決められない人です。

なぜ、決められないかというと、まあ、自分の判断に自信が持てない。というのが、ひとつです。ただ、自分の判断に完全な自信を持てるひとなんてそうそういないわけです。みんな、自信持てないけど、でも、これで書くしかない、と腹をくくって、書くわけです。だって書かなきゃいけませんからね、仕事ですからね。

そこが、覚悟を決めきれない。なぜか。怖いからです。何が怖いのかというともちろんお客さんにベストじゃない選択だったらどうしようっていう怖さもありますが、たいてい、そうじゃない。批判が怖いんです。お前間違ってるだろ、それちがうだろ、という、批判が。


で、なぜ批判が怖いか。その理由の筆頭は、自分に根本的な自信がないからです。自分に、根本的に、自信があれば、少しくらい、批判されたって、ああ、そういう意見もあるな、とか、それくらいで済みます。それで済まないくらい怖い、その理由は、根本的な自信がその人にないからです。

まあ、ボス弁が以上に厳しくて執拗に批判するとかね、部総括裁判官(裁判官の上司みたいなものです)がねちねち批判するとか、そういう場合には、そりゃ、誰もが書けないでしょうが、そういう、誰もが書けないケースではないのに、書けない人、というのは、そもそも人間として、根本的な自信がないことに由来します。

根本的な自信がないから、批判が怖い、批判に異常に傷つく。異常なほどに傷つくから、時に激高して、批判に対してかみつく、許せない。それで感情的な反論をしてしまう。そこでトラブルになる。それでますます書けなくなる。。。。

こうなったら悪循環で、弁護士なら、事案放置で懲戒とかになりかねません。お客さんにとっても大迷惑です。

で、最後に、こういう弁護士を選ばないための、野島なりのコツ、を書いておきます。

それは、その弁護士が、てきぱきしているかどうか。面談の際に、弁護士を、よく見てください。てきぱき、割とはっきりとしゃべる弁護士は、たいてい、さほど遅筆ではないはずです。てきぱきしゃべれる、ということは、自分がしゃべっていることが頭の中で整理されており、かつ、自分がしゃべっていることにある程度、自信がある、ということです。

そういう人を選んでください。そして、選んだら、信用してあげてください。弁護士は、信用されると、張り切っちゃういきものですから。